NPO法人 熱いぞ熊谷からの野球教室 代表



あつべえ先生のボール投げ教室!


子どもの体力低下が叫ばれる中、幼稚園や保育園で精力的にボール投げ教室を行なっている団体があります。
NPO法人「熱いぞ熊谷からの野球教室」です。
野球のユニフォーム姿で子どもたちを元気に指導するのは、代表の長濱茂雄さん。
「あつべえ先生」というニックネームで、子どもたちに親しまれています。


長濱さんは、全国の小学校で行われる「新体力テスト」のソフトボール投げで、埼玉県が全国ワースト1位になったことを知り、2008年より幼児向けのボール投げ教室をスタートしました。
「子どもたちの“投げる”力が低下していることが心配になり、
自分がやらなければという使命感を感じました。
目標は、埼玉がボール投げ日本一になることです!」
長濱さんはそう意気込みます。


実は、熊谷商業高校時代にキャッチャーとして甲子園に出場、ベスト8になった経歴をもつ実力派の長濱さん。
教室には他にも6人の先生がいますが、いずれも60〜70代の元高校球児という凄腕の持ち主です。
野球はもちろん、長く歩んできた人生の経験と知識も活かして、子どもたちの指導に当たっています。



身体の使い方やボールを投げる方向を分かりやすく説明するあつべえ先生

「熱いぞ熊谷からの野球教室」では、現在、40カ所近くの幼稚園や保育園からの依頼を受け、教室を行っています。
年10回、園を訪れて年長児にボール投げの指導を行います。
熊谷市や本庄市、深谷市など近隣の園が中心ですが、東京都や群馬県まで出張することもあるのだとか。
教室開始から10年以上経ち、これまで1万3千人以上の子どもたちを指導してきたというから驚きです。


 


年長児の指導にはたくさん工夫が


「ピーッ!」「ピッ!」
今日も、幼稚園のグラウンドにあつべえ先生の吹くホイッスルの音が響きます。
準備運動は、身体を反らせる「バナナ体操」。
「1、2、3、4!」とあつべえ先生の歯切れの良い号令に合わせて、子どもたちは体操を始め、楽しい声がけに笑い声が響きます。
タオルを使用して投げる「ぞうさん投げ」や、力を入れない「プリンちゃん投げ」。
楽しいネーミングで、子どもたちがイメージしやすく飽きさせない工夫をしています。
子どもたちから「あつべえ先生、もっとやりたい!」「もう終わりなの?」とせがまれた時や、楽しくてピョンピョン飛び跳ねる子どもの姿を見た時、「指導者冥利に尽きる」と感じるのだそうです。



元気な子どもたちを相手に、やさしく触れ合う

ボール投げは、「体をひねり全身をしならせながら投げる」という技術を体得することで、飛距離が伸びていくのだそうです。
肩や肘、前腕、手首の使い方、ボールを離すタイミング、身体の斜め回旋、腰と下半身の体重移動など、説明しようとするとなかなか高度な技術。
これを子どもたちに身体で分かってもらえるように、例えば、タオルを綱引きのように引っ張り合って体重移動の感覚を感じるメニューなど、楽しみながら身体に体験させる方法を模索しています。
約30ほどのメニューを1年間で行います。


教室では、最初の4月と最後の3月にボール投げの記録測定を行います。
1年を通じてボール投げ指導をすると、男子は平均3.5m、女子は平均2.5m程度、記録が伸びるのだとか。
春には6mだった記録が、卒園時に23mにまで伸びた男子もいたそうです。
指導を受けた園の年長児の記録を平均すると、小学1年生の全国平均を上回る力をつけています。
長濱さんたちの指導の成果は、確実に実を結んでいるようです。


 


子どもたちの生きる力を醸成する


長濱さんが指導のモットーにしているのは「相手の目を見てしっかりアイコンタクトをし、受け答えをすること」と「球がそれたら素直に謝ること」。
相手がいるからできるキャッチボール。
子どもたちは、「いくよー!」「いいよー!」と、必ず互いに声がけしながらボール投げを行っています。


幼児期のボール遊びは、情緒や情操教育、社会性を育むのに良い機会で、「質の高い幼児教育だ」と長濱さんは言います。
「屋外で土や風の感触を知り、外に出て“熱い(暑い)”“寒い”と肌で感じることも、生きる力の醸成につながります。
転んだら“痛い”とか、変なボールを投げたら“相手が嫌がる”ということも分かります」。
ボール投げだけでなく生きる力も育てている、と責任感をもって取り組んでいます。



ボール投げの体験で「人生を生き抜く“知恵”も習得できる」と語る長濱さん

「大人にとっては当たり前かもしれないボール投げですが、
初めて自分の手からボールが飛んで行った時の、子どもの感動は計り知れません。
一人でも多くの子どもに、願わくば日本全国の子どもたちに、
この感動を味わってもらいたいと思っています」。


「野球で育ててもらった恩返しをしている」と語る長濱さん。
今日もどこかの園で、子どもたちにボール投げの楽しさを伝えていることでしょう。


長濱さんは埼玉縣信用金庫の元職員で、私たちさいしんレポーターの先輩でもあります。
退職後も地域の人々のために活動する先輩の姿を誇りに思うとともに、自分ができることは何だろう、と改めて考えさせられたレポーターでした。


◎レポートbyさいしん地域プロデューサーS


 


特定非営利活動法人 熱いぞ熊谷からの野球教室
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