(同)本庄デパートメント 代表



誕生! 本庄デパートメント


埼玉県の北西部、群馬県との県境に位置する本庄市。
高崎線の本庄駅前から伸びる本庄銀座通り商店街には、趣のある古い建物が今もたくさん残っています。
202111月、この銀座通り商店街の中に「本庄デパートメント“WORK+PARLOR(ワークパーラー)」がオープンしました。
100年の元料亭の建物をリノベーションして作り上げられたこの新しい空間。
異業種の人が集まって働くコワーキングスペースであり、スペシャリティコーヒーとクリームソーダを提供するカフェであり、地元クリエイターの小さなショップを支えるシェアスペースでもあります。



本庄デパートメント内観。手前はカフェ、奥はコワーキングスペースになっている。

「本庄市界隈の面白い人や情報に出会えるワクワクする場所を作りたい!と考えていました。何より自分の暮らしを楽しくしたかったんです」。
こう創業のきっかけを振り返るのは、代表の榎本千賀耶さん。
建築士でデザイナーでもある榎本さんは、味わい深い本庄の商店街に惚れ込んで移住を決意した、筋金入りの本庄愛溢れる人物です。
5年前から、大好きな本庄の商店街に、面白い人や素敵なもの、楽しいプロジェクトが一同に集まるデパートのようなクリエイティブな拠点を作るというアイディアを温めていたと言います。


そのコンセプトは、例えば、本庄デパートメントの店舗の改修作業からも垣間見ることができます。
100年の建物を自分たちの手で解体、一部の内装も職人さんたちの手を借りながらDIYで行なった、創業前のリノベーション。
この行程自体を楽しんでもらおうと「DIY作業デー」や、左官や家具作りなどのワークショップを企画、解体現場を開放したのです。
年配の方から高校生の女の子まで、多くの人が作業を手伝ってくれたのだそう!
ペンキを塗ったりタイルを貼ったり、何か楽しそうなことをやっていると、人が集まってきて手伝ってくれる……そんな地域のハブとなる場を目指していることがよく分かります。
「地域の人を繋げることが仕事、というと少し仰々しいのですが、結果的に地域の人が私たちと一緒に楽しんでくれて、つながってくれると良いなという感覚です」と、榎本さんは笑顔で語ってくれました。



本庄デパートメント外観。築100年の料亭をDIYでリノベーションした。

 


豊かな暮らしの足がかりに


2019年、榎本さんは、もう一人の本庄デパートメントの代表である早川純さんと出会います。
榎本さんは早川さんと組むことで「視野が広がった」と言います。
早川さんは、都内と地方の行政に携わっていた元公務員という経歴の持ち主。
コロナ禍に公務員を辞めて本庄デパートメントを立ち上げた、こちらも筋金入りの人物です。


「コロナ禍で、すぐ隣にいる人とのつながりの大切さについて痛感した方が多いと思います。
すぐ隣の人とどう助けあえるか、どう笑いあえるかが、暮らしの豊かさにつながるということに、自分自身も気づかされました。
人とのつながりがあってこその地域の暮らしです。
まずは本庄あたりの人が自分たちの暮らす街を楽しむ、楽しむことでつながっていく、そんな地域の関係性がこれからの時代には必要なのではないかと考えました」。


これまで、被災地支援やリノベーションまちづくりなど、さまざまな形で地域創生事業に関わっていた早川さん。
ほっとけない層という表現で、本庄の未来についても考えています。
「まちなかに子育て層が集い、子どもがいられる場所があることで、私たちのような将来のこのまちのほっとけない層が育っていく未来を思い描いています」。


オープン直後の年末には、商店街で餅つきのイベントも行いました。
多くの地元の子どもたちが参加し、いつもは静かだという商店街がにぎやかな遊び場になったのだそう。
次世代を担う子どもたちに「まちの記憶と人のつながりを残す」ことで、「将来のこのまちのほっとけない層」が育っていくという信念の元、「これからも商店街を遊び倒していきます」と早川さんは語ってくれました。


 


古いものを新しい価値として甦らせる


現在、空き家問題や衰退する商店街など、多くの地方が抱える「地域課題」。
このような現状を決してネガティブに捉えず、楽しみながら解決していきたい、とお二人は語ります。
本庄デパートメントが次に考えている企画は、本庄銀座通り商店街の空き家や空き店舗を利用して、大学生や高校生たちのショップ出店をサポートするプロジェクト「銀座通りデパートメント」です。
商店街全体を巻き込んで、次世代の子どもたちを育てる試み。
本庄デパートメントのコミュニティは着実に広がりを見せ始めているようです。


かつては栄えていた商店街の100年前の建物をリノベーションし、古い良い部分は残しながら新しい価値として現代に甦らせたお二人。
本庄デパートメントの建物自体が、これからの地域のあり方を体現するシンボルのようです。
「本庄あたりでこんな二人が何かやっているらしい、と面白がりながら見守ってください。時には、一緒に楽しんでくださったら嬉しいです!」
本庄という街に生まれつつある新たなコミュニティを、またこの先の未来へとつなげていく、お二人の魅力的な活動は続きます。



 


◎レポートbyさいしん地域プロデューサーS


 


本庄デパートメント
埼玉県本庄市銀座2-2-1
https://honjo-department.com